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山形地方裁判所 昭和35年(ワ)144号・昭35年(ワ)131号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕一、不動産を担保に金融を得る手段として買戻約款付売買を締結した場合、当事者が買戻という用語を使用しても、それは必ずとも民法第五九七条以下の買戻を意味するとは限らず、場合によつては、再売買の予約若しくは譲渡担保の設定と考えられる事例も存在するから、その法律的な性質については当事者の用いた用語に拘泥せずに合理的に判断しなければならない。

二、知事の許可を得ない間に結ばれた農地の売買契約は、本来の意味の停止条件付法律行為ということは出来ないまでも、民法の条件に関する条文をその性質に反しない限り類推適用することは、何等不合理でない。

〔判決理由〕本件の如く、不動産を担保に金融を得る手段として買戻約款付売買を締結した場合、当事者が買戻という用語を使用しても、それは必らずしも民法第五百七十九条以下の買戻を意味するとは限らず、場合によつては再売買の予約若しくは譲渡担保の設定と考えられる事例も存在するのであるから、その法律的な性質については当事者の用いた用語に拘泥せずに合理的に判断しなければならないところ、本件においては、原売買の代金額と買戻の代金額とが異なる上に、買戻の特約につき登記手続を経由した形跡がないので、原被告間の昭和三十三年十二月二日の更改契約およびこれに付随する再売買の予約たる性質を有する契約と解するのが相当である。従つて、原告は右更改契約の締結により別紙第一、二目録記載の不動産について一応、被告が再売買の予約完結権を行使してその権利を遡及的に取戻すことがあるかも知れぬ不確定な権利を取得したのであるが、昭和三十六年三月末日の満了を以つて被告の再売買の予約完結権は消滅したので、翌日以降原告の別紙第一、二目録記載の不動産に対する権利は確定的な状態になつたものと言わねばならない。<中略>

農地の売買契約における知事の許可は、該売買契約が効力を発生するために法律上当然に必要とされる要件であるから、当事者がこれを停止条件とすることに合意してみても、それは法律上当然の効力発生要件を反覆しただけで言わば一種の法定条件を確認したに過ぎず、之を本来の意味の停止条件付法律行為ということは出来ないと解すべきであるが、当事者間に知事の許可を得ない間に農地の売買契約が結ばれると、知事の許可によつて売買の効力を生ずべき浮動的な法律関係が形成され、然も右許可によつて農地を取得すべき買主の期待権的地位が私法上保護に値する点において停止条件付契約が締結されたときと類似するから、この場合民法の条件に関する条文をその性質に反しない限り類推適用することは何等不合理でなく、従つて原被告間の別紙第一目録不動産に関する売買は一種の停止条件付法律行為に該当するものと考えられる上に、このように停止条件付法律行為によつて予め売買の契約を締結しておくことは、もとより法の禁止するところでないというべきである。そして原被告間の右売買は、既に認定した通りその効力が確定的な状態になつたのであるから、被告は原告のため別紙第一目録記載の不動産につき、山形県知事に対し農地法第五条の許可申請手続をなすべき義務を負うことが明らかである。そこで更に、右許可があつた場合の登記手続請求および引渡請求は、将来の給付を求める訴であるからその当否につき考えるに、被告は第一四四号事件において別紙第一目録記載の不動産に対する所有権移転登記の抹消を請求している外、第三一号事件においても原告の主張事実を争つて右不動産に対する登記手続および引渡を拒否しているので、将来知事の許可を受けたときにおいても、原告において更に訴を提起して請求しない限り任意に登記手続義務及び引渡義務を履行するものとは認め難いから、原告は将来の給付を求める法律上の利益を有するものと解すべく、従つてこれを求める部分の原告の請求は正当というべきである。(裁判長裁判官上田次郎 裁判官石垣光雄、裁判官西尾幸彦)

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